Stories of hap.
ISSUE 002
This is going somewhere.
雨続きのグレイな東京。心なしか気分もグレイだ。大学進学とともに上京してきて、もはや地元で過ごした月日よりも東京での年月の方が長くなってしまった。アーティストにはなれなかったけど、デザイナーとしてなんとか仕事は安定してきた。
仕事に煮詰まった午後。気晴らしに、気になっていた新作の小説でもめくろうかと駅前の本屋に向かう。ついでに、先週届いていた同窓会の往復はがき。これも「欠席」に丸をつけて、駅前のポストに投函してしまおう。
「欠席」なんだから、返信しなくてもよさそうなものなのに、妙に律儀なところが俺らしい。東京にいる同級生とは、今でもときどき顔を合わせているけど、しばらく地元には帰ってない。
「今時、『往復はがき』かよ」カシャン。とポストに投函するなり、つぶやく。ふと顔を上げると、こんなところに電話ボックスがあったのか。今時、公衆電話使ってる人も珍しいよな、と目に入った背中の文字をぼんやり眺める。
This is going somewhere.
結局、本屋で立ち読みした新作はイマイチで、帰宅するなり、「あ〜あ」と手持ち無沙汰にベッドに寝転がる。
すると不意に心に浮上したのは、さっき見た言葉だった。
This is going somewhere...
「ちゃんとどこかに向かってる……、か。あっ!」
今、進行中のデザインコンセプト、これじゃね? ガバッと起き上がり、Macを立ち上げる。
ちょうどその頃、窓の外でも雲は晴れ、青空には虹がかかっていたことを知らぬまま、俺は夢中で仕事に向かっていた。
